寿命ですから

「修理は可能なんですか?」
「寿命ですから……修理も可能ですが、すぐ壊れるんじゃないかと思いますんで、お勧めはしません」
 給湯器もバージョンアップしているため、古い給湯器の部品がもう製造されていない可能性もあるという。
「交換をしたほうが良いとは思います。でも、スイッチはつきましたし、これで様子を見てもらっていいですか?」
 はい、という返事をしながら、頭はまったく回っていなかった。こんなにあっさり給湯器がお陀仏になってしまうとは予想もしていなかったのだ。いや、最悪の予想はしていたがこれほどあっさりと交換を勧められるとは。
 50万近くしているのに、これほどあっさり!
「あの、うちは床暖房も入ってるんですがこれで動くんですか?」
「動いていると思いますよ。リモコンはどこにつけられてますか?」
 リビングへ戻ると、時間が大幅にずれているものの床暖房のスイッチは入った。このまま放っておいたら温まるという。結局、点検をざっと行い、ガス屋さんは「異常があったらまた連絡ください。でも交換も視野に入れたほうが良いと思います」と帰って行った。残された私といえば「どうしよう。どうしたものか」と頭を抱える羽目になった。

交換しよう……

 流石にこれほど早く壊れると、家族のだれも予想していなかった。とりあえずお湯が使えるようになった我が家では、給湯器が止まった際の緊急対応を全員に教え、それぞれ止まったらスイッチを確認するようにした。
 しかし、ガス屋さんの予言は当たり、給湯器はその冬度々ストップした。
 ある時は、早朝に。ある時は夜に。ある時は昼間に。
 最悪なのが、お風呂に入ろうとして水しか出ないときだ。湯船につからなくていいから、とりあえずシャワーを浴びたいときに、お湯ではなく水が出る。あれは、本当に、泣きたくなる。悲鳴を上げたこともある。
 しかも、冷たい水を浴びて半泣きで、冷えた体で服を着込み、一度外へ出てフェンスをよじ登って裏手に回って、給湯器のスイッチを確認する必要があるため非常に面倒だった。冬であるため外は当然寒い。下手をすれば雪だって舞っている。手がかじかむ。いったい何をやっているんだろうと泣けてくる。
 我慢の限界はあっさり家族に訪れた。

「給湯器を交換しよう」