親に報告したって壊れたものは壊れている

 困り果ててしまった。とりあえず、まだ寝ていた親を起こした。お湯が出えへんねんけど!
「何言うてんの。まだその給湯器新しいはずやろ? 6年か7年か……」
 面倒そうに起きた親が、現状を把握するにつれ、ため息をこぼす。前回壊れたときの記憶がよみがえる。
「これ、ガス屋さんに電話せなアカンわ」

ガス屋さんを呼んでみる

 今の給湯器を取付けてもらったガス屋さんに問い合わせてみると(いただいた名刺に書かれてあった携帯番号へ、朝から直で電話をする母)、午前中の内に見に来てくれるとのこと。
 というわけで、緊急事態につきその日は家にいて待っていた。当時学生で時間のあった私に、修理担当が回ってきた訳だ。そして気づいたことがある。
 我が家は20年以上前から床暖房を導入している。前の給湯器から、浴室乾燥機と床暖房を導入しているため、こたつ等の「足元へ置く系」の暖房器具がほとんどない。当然ホットカーペットすらない。
 つまり、暖房器具がエアコンしかない。

 ……我が家の暖房は給湯器にここまで依存していたのかと驚いた。
 正直なところ、お湯が出ないだけであれば「仕方がない。直るまで待とう。お風呂は近くの銭湯、もしくは温泉に行こう、たまにはいいよね。ははは」で済むのだけど、暖房がまったく利かないのは参ってしまった。足元が冷えて仕方がないのだ。冷たすぎる。
 給湯器が故障すると、冬場は泣ける。
 料理もする分には良いけど、洗い物が辛すぎて、その日はゴム手袋をはめて洗い物を片づけた。しかしゴム手袋でも冷たいものは冷たい。
 本当に困った。

 お昼に近いころ、インターホンが鳴りガス会社がやってきた。ざっと点検してもらったところ「寿命ですね」とさらりと言われた。
 寿命!?
「給湯器は7・8年ぐらいで壊れてしまうんですよー。ちょうどそれぐらいですよね。常に稼働してる分、部品の摩耗も早いんです」
「前の給湯器は15年以上使っていたんですが……」
「15年はすごいですね! 普通はこんなものなんですよ。これわかります? このスイッチが勝手に切れちゃってるのが原因ですね」
 簡単な動作の手順を教えてもらう。今はもう一度スイッチを入れているから大丈夫とのことだった。
 おそらくまた壊れる可能性はあると言う。
 6年だか7年の給湯器は新しい方だ、と考えていたことも、思えばどうかしている。小学生が卒業するレベルなのに、なぜ「新しいほう」だと思い込んでしまったのか。